「5拍子」は、日常で耳にする「2」や「4」の偶数世界を飛び出した、スリリングで知的なリズムです。
5拍子とは、一小節の中に拍を5回数えるリズムのことです。音楽史においては、ロシアの作曲家チャイコフスキーが交響曲に取り入れたり、ジャズの世界で革新的な試みがなされたりと、常に「常識を覆す新しい響き」として愛されてきました。私たちが無意識に心地よいと感じる「安定した歩み」をあえて一歩踏み外すような、独特の緊張感と、割り切れないからこそ生まれる「円を描くような回転感」が最大の特徴です。
この理論的な正体は、実は「3拍子」と「2拍子」の組み合わせにあります。5を単純に5として刻むのではなく、多くの場合は「1・2・3 / 1・2(3+2)」あるいは「1・2 / 1・2・3(2+3)」という小さな塊の連続として構成されています。この「重心のズレ」があるおかげで、5拍子はただ奇妙なだけでなく、まるで前のめりに転がるような、あるいは優雅に浮遊するような、魔法のような推進力を手に入れることができるのです。
5拍子を語る上で絶対に外せない名曲が、デイヴ・ブルーベック・カルテットの『Take Five』です。この曲の冒頭、ピアノが刻む「ズン・チャッ・チャ、ズン・チャ(3+2)」というリズムを聴けば、5拍子がこれほどまでにクールでスタイリッシュに響くのかと驚くはずです。また、現代のアニメ音楽ファンなら、アニメ『マクロスΔ』の『いけないボーダーライン』なども、サビに向かって5拍子を効果的に使い、聴き手の心をざわつかせるテクニックが光る楽曲として有名ですね。
5拍子をマスターすると、音楽の中に「計算された不完全さ」の美しさを見出すことができるようになります。これは、現代のプログレッシブ・ロックや数学的なアプローチをとる「マスロック」といったジャンルでも核となる考え方です。あえて割り切れないリズムを選ぶことで、予定調和ではない、常に新しさを感じさせる音楽体験を生み出すことができるのです。
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