沖縄民謡の音階

沖縄民謡でよく使われるスケールは、琉球音階(りゅうきゅうおんかい) と呼ばれる。これは、西洋音楽のドレミファソラシドの音階から、 の音を抜いた ド、ミ、ファ、ソ、シ の5つの音で構成される五音音階(ペンタトニック)である。この独特の音階が、沖縄音楽特有の明るく、どこか哀愁を帯びた旋律を生み出している。

沖縄民謡の伝統的な旋律には、西洋音楽のようなコードという概念が元々存在しなかったと言える。古典的な沖縄音楽や民謡は、主に歌と三線(さんしん)による単旋律、あるいは複数の歌や三線が少しずつ異なる旋律を重ねる「ヘテロフォニー」という技法で構成されていた。

しかし、明治以降の西洋音楽の影響や、他の音楽ジャンルとの交流の中で、沖縄民謡にもコード伴奏が付けられるようになった。現在では、多くの沖縄民謡でギターやキーボードなどによるコード伴奏が一般的になっている。その際、琉球音階の特性を活かしつつ、西洋音楽のコード理論を応用したコード付けが行われている。そのため、「琉球音階特有のコード」という厳密な定義はないものの、琉球音階の響きに合うように工夫されたコード進行が用いられている。

琉球音階そのものから直接的に「特有のコード」というものは、西洋音楽のコード理論の枠組みで考えると定義しにくい。なぜなら、琉球音階は5音で構成されており、西洋音楽の基本的なコードである三和音(トライアド)を構成するための十分な音を持たない場合があるからだ。

しかし、琉球音階の響きに合うように、既存の西洋音楽のコードを工夫して用いることは広く行われている。例えば、琉球音階に含まれる音を主体としたシンプルなメジャーコードやマイナーコードがよく使われる。

特に、琉球音階のド、ミ、ファ、ソ、シ の音に基づいて考えると、CメジャーFメジャーGメジャーAmマイナー などのコードが自然に響きやすい。これらのコードは、琉球音階の主要な音を含んでおり、楽曲の素朴で温かい雰囲気を損なわない。

また、独特の浮遊感や哀愁感を出すために、7thコードsus4コード などのテンションコードが用いられることもあるが、その使用は楽曲の雰囲気やアレンジによって様々である。

重要なのは、琉球音階が持つ独特の音の響きを生かしつつ、西洋音楽のコード進行の知識を応用することだと言えるだろう。琉球音階の旋律に、既存のコードをいかに自然に、そして効果的に組み合わせるかが、沖縄民謡のコード付けのポイントとなる。

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