ヘテロフォニーとは、複数の楽器や声部が、基本的に同じ旋律を演奏・歌唱しながらも、それぞれが微妙に異なる装飾や変奏を加えることで生じる音楽のテクスチュア(音の絡み合い)のことである。ユニゾン(斉唱・斉奏)のように完全に同じ旋律を奏でるのではなく、音のタイミングのずれ、わずかな音程の変化、装飾音の付加などによって、旋律線が複雑に絡み合い、独特の響きを生み出す。民族音楽や伝統音楽においてよく見られる表現方法であり、単旋律音楽に豊かな表情と奥行きを与える効果を持つ。
ヘテロフォニーの語源は、古代ギリシア語の “heterophōnia” (ἑτεροφωνία) である。これは、
- “heteros” (ἕτερος):他の、異なる
- “phōnē” (φωνή):音、声
という二つの言葉が組み合わさってできた言葉である。したがって、直訳すると「異なる音」または「異なる声」という意味合いになる。音楽用語としては、「同じ旋律でありながら、それぞれがわずかに異なる形で演奏・歌唱されること」という、その音楽的な特徴を的確に表していると言える。

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